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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THEピット――静かにたぎる

2011_1223_0672  整備室で、重成一人が本体を割っていた。トライアル最終戦の渾身整備か……と思いきやそうではなかった。
 目撃はしていないのだが、朝の試運転で転覆したらしいのだ。
 そういえば、整備室入口付近が、なぜか水浸しになっているのだった。これは水をかぶったモーターを持ち込んだ形跡である。つまり、重成の整備は転覆整備。ファイナルへの勝負駆けの朝、とんだアクシデントに見舞われてしまったわけである。
 レース以外での事故といえば、すぐに初戦の峰竜太を思い出す。しかし、あれは落水だった。モーターは無事だったのだ。重成は、調整に費やしたかった時間を転覆整備に使わねばならなかった。これがどう出るのかはわからないが……。
 表情はむしろ明るく、これは峰を思わせる変化ではあった。身体も基本的には問題なさそう。これで開き直って、思い切ったレースを見せてほしいものだ。
_u5w7146  整備室には、佐々木康幸もいた。長嶺豊さん情報だと、ピストンリングを4本交換したそうだ(それでレースを走るかどうかは、直前情報をご確認ください)。ボーダーを21点とすればファイナル当確、順位も2位につけている佐々木が、大きな整備を敢行したのだ。これがどう出るのかは、やっぱりわからないが……。
 それにしても、佐々木は本当に素敵な人柄だ。整備後のモーター装着を手伝ったのははるかに後輩の平本真之で、平本は空いた架台を置き場に持っていこうとしたのだが、佐々木はこれを固辞しようとしていたのだ。しかし、平本もまた好青年。先輩を動かすわけにはいかないと、架台を手放そうとしない。まるで飲み代払う時に譲り合ってる酔客……は言いすぎだが、佐々木は「おい、もってっとけ」って言ったっていいと思ったりするのである。結局、平本が譲らずに架台を運んで行ったのだが、佐々木はそんな平本に丁寧に頭を下げるのであった。そんな佐々木だから、大きなタイトルを手にしてほしいと肩入れしたくなる。

_u5w7602  シリーズ戦記事でも記した通り、ピットは静かで、ということは当然、決定戦組の動きもそれほど大きくないということである。ただ、水面に出ていた選手は、シリーズの準優組よりも決定戦組のほうが多く、松井繁が頻繁に試運転を繰り返していたのは、さすがだと思えた。ほかには今垣光太郎、重野哲之も試運転をしていて、二人とも2R前にはいったんボートを陸に上げている。その後の重野は、ギアケースの調整に入っていた。
2011_1223_0552  重野といえば、太田和美が歩み寄った際、重野が声を弾ませて会話をしていた。太田も試運転組のひとりだ。重野からは「昨日よりずっと良くなってます」という声も聞こえてきていて、もしかしたら太田との足合わせや太田の言葉にヒントがあったのだろうか。2011_1223_0199 ライバルに情報を隠して戦うのももちろん真剣勝負。そして、ライバルの力を引き出したうえで叩こうとするのも真剣勝負。とにかく太田の粛々としたたたずまいは実にシブく、淡々とした様子がかえって迫力を感じさせるのだった。
2011_1223_0390  ペラ室には、池田浩二、篠崎元志&峰竜太、田中信一郎。田村隆信はエンジン吊り時にしか姿を見ていない。瓜生正義は、ペラを叩いている現場そのものは見ていないが、ペラ室から出てくるところが遠目に見えた。そういえば、装着場の隅で1Rのエンジン吊りを眺めていたら、「こんにちは~」と声が見えないところから飛んできて、これが瓜生。選手にはこちらから挨拶をするよう心掛けているのだが、瓜生に関しては7対3くらいで先に声をかけられてしまう。これが今もっとも強い男の一人なのだから、後輩選手じゃなくたって、尊敬してしまうわけである。
_u5w7091  トライアル最終戦の朝は、そんな具合に大きな動きはあまりなかった。こちらもまた、静かに静かに闘志がフツフツとたぎっているのだ。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)


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