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ボートレース特集 > 賞金王トライアル第3戦 私的回顧
この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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賞金王トライアル第3戦 私的回顧

哀しき逃走

11R  
①田村隆信  10
②松井 繁  14
③田中信一郎 14
④瓜生正義  15
⑤佐々木康幸 20
⑥重野哲之  13

2011_1224_r11_1138  枠なりの120m起こしから、田村隆信が完璧なイン逃げを決めた。昨日の佐々木康幸はターンマークを大きく外したが、こちらはブイを舌で舐めるほどのギリギリの旋回。鮮やかな弧を描いて、10点のポイントを加算した。結果的に、遅すぎる10点ではあったが。
 どれほど完璧な逃走だったかは、勝ちタイムの1分44秒5が証明してくれる。5日目までのシリーズレコード。トライアル初戦の池田浩二よりコンマ2秒速く、田村はゴールを通過した。「たとえファイナルには届かなくても!」という意地と開き直りが、この快走を生んだのだろう。
2011_1224_r11_1182  2コースの松井繁は、いつものように差し回り。昨日と違ってインには届きそうにない差しではあったが、2着は十分ありそうに見えた。しかし、王者が信じられないミスを犯す。ターンマークに接触して、大きく外へと流れてしまったのだ。百戦錬磨の王であっても、やはり賞金王という舞台は心を惑わす存在なのか。松井と直角に交差するように、田中信一郎と瓜生正義が突き進んでゆく。

2011_1224_r11_1159  徐々に縦長になってゆく隊形の中、最後まで競り合っていたのが4番手の重野哲之と5番手の松井だった。たかが4着争い、されど4着争い。松井がこのまま5着に終われば、21点でファイナル当否のボーダーに乗る。首筋の寒いゴールになってしまう。追って追って追って、最終ターンマークでギリギリ重野を捕まえた。舟券の範囲に留まらないのが、賞金王の凄まじいところ。松井は貴重な6ポイントを加算して、ファイナルへの安全圏に到達した。田村の意地と王者プライド。それが、このレースのハイライトだった。
 ただ、結果論として思うことがある。松井には悪いのだが、もしも追い上げが届かず5着のままだったら……松井は明日のファイナルで6号艇になっていた。緑のカポックの松井繁が何を思い、何をするのか。何をしてくれるのか。そんなファイナルも見てみたかったなぁ。

祭りの中

12R 進入順
⑥重成一人   08
①今垣光太郎 15
②太田和美  13
③峰 竜太  15
④篠崎元志  20
⑤池田浩二  19

2011_1224_r12_1261  スタンドの空気がいっぺんに変わった。本当に、いっぺんに変わった。重成一人が真っ先に舳先をスタート方向に向けた瞬間。
「よっしゃぁぁっ!!」
「シゲナリ、やったぁぁ!!」
「イマガキ、何やってんだぁっ!!」
 歓喜の声と怒声と罵声と、さまざまな叫びが入り乱れて、凄まじい大音響になった。私はそれを、2マーク寄りのスタンドで聞いていた。聞くだけでなく、私も「うわっ」「やったー!」とか叫んでいたと思う。重成がどこまで動くのか、それを見届けるために記者席からスタンドに走った。そして、それを見た。それを聞いた。

2011_1224_r12_1262  誇張ではなく、周辺はお祭り騒ぎだった。みんな、ギラギラの目で何事かを叫び続けていた。
「イマガキィ、怒りのジカまくり行けーーーっ!!」
 と、隣のオヤジ。
「シゲナリィ、そのまま行っちまえ~!!」
 と後ろの若い衆。

 己の舟券に忠実ないろいろな声が耳に届いたが、それだけではない、「とんでもないことを重成がやらかした」という思いが、ぐおおおぉという轟音となってスタンドを覆い、それはずっと止むことがなかった。私も含めて、スタンドの全員が日常から非日常へと一気に連れ去られた。そんな轟音。
2011_1224_r12_1290 12秒針、もちろん声は止まない。お祭り騒ぎそのままに、新たなるステップに突入する。重成のスタートがいい。大歓声。重成の先マイ。大音響。バック~2マークの激しい2着争い。メーターが振り切れそうなほどの轟音。

2011_1224_r12_1309  このあたりから私は、自分だけの世界に没入する。アップした予想フォーカスの他に、私は三四郎(346)ボックスを買い足していた。どれも300倍以上の大穴。バックで634の隊形になったとき、私は狂人のように叫んだ。池田浩二が凄まじいパワーでその間に入ってくるまでは……。
 6-5態勢が固まって、私はやっと我に返った。まだスタンドは祭りの真っ只中にいた。峰竜太や太田和美や篠崎元志の競り合いに、一喜一憂の叫びを発していた。重成のアタマ舟券はすべて万シューだから、買っている人は少なかったはずだ。むしろ、応援している選手を賞金王ファイナルに! という思いで叫んでいるのかもしれない。
 だが、それだけではない、と私は思った。これだけの観衆がこれだけ熱狂的になっているのは、このお祭り騒ぎをとことん最後まで楽しみ尽くしたいのだ、と思った。
 観衆(と私)は、こんな競艇をずっと待ちわびていたのだ。

2011_1224_r12_1346  ゴールが過ぎても、立ち去る人はいなかった。変わらぬ大音響のまま、誰もが重成の帰還を待ち構えていた。そして、重成が2マークを回って近づいてきたとき、観衆は……断じて大袈裟ではない、SGのウイニングランと同等か、それ以上の歓声と拍手が重成に注がれた。私も、拍手、拍手。私は重成の大ファンというわけではない。周囲も重成ファンだらけだったはずもない。ほとんどの人々は、舟券を外したことだろう。そんなことではないのだ。
 我々は、素晴らしい競艇を見たのだ。
 最高峰の舞台で己の心(意志や闘魂や決断や勇気やあれやこれや)を貫き通し、しかもギリギリの「勝負駆け」を自力で成功させた。そんな素晴らしい競艇ヒーローを、祝福せずにはいられないのだ。いや、祝福というより、感謝だったか。
「ありがとーーー、シゲナリィ!!」
2011_1224_r12_1265  ピットへと消え去る重成に、「おめでとう」よりはるかに多く「ありがとう」の声が飛んだ。重成ファンの心、舟券を当てた者の心、それらも多々あっただろうが、どちらでもなかった私も「ありがとーっ」と心の中で叫んでいた。きっと、重成が大敗したとしても、同じ言葉を投げかけただろう。
 忘れかけていた、待ち焦がれていた、命がけの賞金王トライアルをありがとう!
 住之江に来れなかった読者には悪いが、今日、この住之江の2マークにいた私は日本一の幸せ者だった。今日の12Rは、水面も観衆もすべて一体の奇跡的な祭りだった。(Photos/中尾茂幸、text/H)


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『しげ爺の賞金王決定戦予想 (最終日)』 2011/12/25 【しげ爺の競艇予想】
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受信: 2011/12/25 0:14:25
コメント

自分も思いっきり舟券はハズレましたが、
この文面通りの気持ち、想いでした。
すげぇもんを見たな…ボート楽しすぎだろ…
ハズレたけど、この満足感。

間違いなく重成が残したものである!

投稿者: ラブ蒲郡 (2011/12/24 22:00:04)
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