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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THEピット――前検模様

2012_0730_0691  ピットに足を踏み入れると、ちょうど選手たちがモーターを受け取り、点検をしている最中。装着場には選手の姿は皆無で、閑散としていた。ナイター取材というのは毎年「1年ぶり」となるので、時間の間隔がつかめないのは毎度のこと。あるいは、SGの選手たちは点検から着水までのスピードが速いのだろうか。
 真っ先に点検を終えてモーターを装着し始めたのは、佐々木裕美。待ち構えていたカメラマンが一斉に取り囲み、シャッター音を鳴らす。フラッシュもパチパチッと光った。突然スポットライトを浴びて、佐々木も照れたように苦笑い。これぞ女子王座というワンシーンではあるが、佐々木当人としては、ちょっとビックリもしたであろう。
2012_0730_0966  続いて、鵜飼菜穂子がモーター装着。SGの水面一番乗りの常連が西島義則であることが多いように、ベテラン選手は本当に手際がいい。何十年も戦い続け、重ねてきたルーティンだけに、動きに無駄が生まれないのだ。佐々木は装着後も入念に点検しており、結局ボートを下したのは鵜飼のほうが先だった。ということで、水面一番乗りは偉大なる女傑・鵜飼菜穂子!
2012_0730_0651  その鵜飼は、係留所にボートをつけて、ここで入念な点検を始めている。これが鵜飼の行動パターンということか。その間に、池田明美がボートを着水した。そして、係留所につける前に、コースへ飛び出す。試運転一番乗りは池田明美だ! 着水するときに顔だけ見たときには明美か浩美か自信がなかったが、ネームプレートをしっかり確認したので明美に間違いない。女子王座取材では、明美と浩美を見分けるのも大事な仕事のうちだが、一節間自信がもてないなんてことも時折あって……(多摩川がそうだった。明美は優出してるのに)。
2012_0730_0956  水面に出たのが明美ということは、ペラ室にいたのは浩美ということになる。ふと覗き込んだペラ室に、さっき着水していた選手と同じ顔があったのだ。浩美は、着水前にまずはプロペラをチェックしたようだ。ゲージを当てて、ペラを見ている。前節で乗った選手がどんなふうに叩いたのか、知っておこうということだろう。
2012_0730_0582  その脇では長嶋万記もペラを見ている。手にはハンマーも。ふと思いつくのは、SGで坪井康晴や服部幸男が、前検日に水面に出るより先にペラ室に入っている姿だ。坪井はガンガンと叩いていたこともあったような気がする。新プロペラ制度導入以降、坪井が絶好調なのはご存知だろう。服部もオーシャンで優出したし、静岡支部は全体的に好調という感がある。もしかしたら、坪井あたりがつかんだ情報が支部全体に流通している? ドタバタしている前検で直接確認することはできなかったが、節中に話を聞けたら聞いてみよう。

 それにしても、ボートレース界というのは、タテ社会だなあと改めて思う。BOATBoy9月号(8月11日発売予定)では幼少の頃から同級生だった川上剛と郷原章平の対談を行なっているが、二人は同じ時期に初めて試験を受け、合格したときにも同期生となった(91期)。そのことについて、二人は口をそろえて「ホッとした」と言っていた。つまり、この世界は年齢が同じだろうが中学の同級生だろうが、登番が古いほうが絶対的に「先輩」なのだ。
2012_0730_1350  新田芳美が点検を終えて、モーターを装着し始めた。すると、かなり離れたところで自身の装着作業をしていた横西奏恵がぶっ飛んできたのだ。モーター装着は一人では無理だから、近い人(関係が近かったり、近くにいた人)がヘルプする。前検を見ていると、先輩の装着は後輩が我先にと群がり、後輩二人でモーターを乗っけるところを先輩が見ている、という光景になったりする。新田は徳島支部ではもっとも登番が上の選手。そして、横西は徳島でもっとも登番が若いのだ(意外なことではあります)。だから、いくら2012_0730_1206 横西奏恵だからといって、先輩の装着シーンを見逃すわけにはいかない。離れた場所にいようとも、常に気を配って、先輩の顔が見えたら駆けつけなければならないのだ。
2012_0730_1174  10期くらいしか離れていない新田と横西ですらそうなのに、山川美由紀と平山智加ともなれば、さらに平山が気を遣うのは当然というもの。40期くらい離れてますからね。山川の装着には当然平山は駆けつけ、西村美智子とともにモーターを乗っけていたが、「ありがとうございまーす」と後輩に礼を言った山川は、モーター架台を決められている置き場に運び始めた。これくらいは自分でやらなきゃ、という感じか。しかし、後輩としては「ヤバい」のである。あわてて山川のあとを追いかけたのはもちろん平山。山川に追いついたのは、架台置き場の10cm手前で、結局は山川が置き場に架台を収めている。2012_0730_1426 山川は、別に何とも思ってなさそうだったが、平山は焦っただろうなあ。せめて、10cm手前であっても追いついてよかった。気持ち的には楽になったはずである。
 ボートレースはプロスポーツである。ということは、やはり体育会系なのだ。実際は新田と横西はリラックスして喋っているし、山川と平山にしたって笑顔で語り合う場面がたくさん見かけられる。それでも厳然として存在する先輩と後輩のルール。個人的にそういうの嫌いじゃない。

2012_0730_1012  さてさて、そんなこんなで選手は続々と水面に飛び出していくわけだが、装着ラストとなったのは海野ゆかりだった。若松は係留所が52カ所もないので、スタート練習&タイム測定後半組(つまりは登番が若い選手たち)は、前半組が終わった後に着水となる。だから、若手のボートは装着場に残っているわけだが、そんななかにポツンと海野ゆかり(と中里優子)のボートがあった。中里も装着は後のほうだったが、シンガリは海野だったのだ。
 ラストだからといって、だらけていたわけではない。SGでもとにかく装着して、真っ先に水面に出て、という西島義則や田中信一郎のようなタイプもいれば、とにかくひたすら丁寧にギリギリまで点検して、ほとんど試運転する時間もなくスタート練習やタイム測定に臨む今垣光太郎のようなタイプもいる。それぞれにスタイルがあるのだ。海野は今垣タイプということだろう。それぞれが己のルーティンをしっかりとこなして、戦いに臨む。前検日にだって、貫くべきスタイルがあるということなのだ。
 というわけで、全員が水面に出て、前検日の感触をつかんで明日からの勝負に臨んでいくわけだが、スタ練&タイム測定が終わってからも過ごし方はそれぞれ。ペラ室はやっぱり選手の姿で埋まるし、ギアケースを調整し始めている選手も多い。明日早い時間帯のレースに臨む選手は、やはり入念に調整しているように見えるな。明日レース場に来てからの時間が短いから。初日は開会式もあるしね。そんなふうに過ぎていく前検。今日のピットは誰もが「暑い……」と愚痴るくらい不快指数が高かったのだが、懸命に作業する選手の顔からはそんな雰囲気など少しも感じられないのであった。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)


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