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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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THEピット――あっさり?

2012_0803_0649   11Rがあと数分で始まろうという頃、廣中智紗衣が装着場に置かれた自らのボートを磨き始めた。
 SGでもよく見かける光景。今垣光太郎、白井英治、佐々木康幸、笠原亮、江口晃生あたりが常連で、相棒を愛おしむように布きれで丁寧に磨き上げる。女子王座では……ん? これが初めて見る光景だ! たしかに、昨日までの終盤戦の時間帯では見た記憶がない。見逃してるだけ? そうかもしれないが、SGに比べれば確実に目立っていないのだ。
 廣中は、モーターの装着部分やヘリの部分などを、小さく畳んだ布きれでゴシゴシとこすっていた。丁寧に丁寧に、まるで祈りをこめているかのように、磨き続けるのだった。

Uu5w8805  え~、いつの間にぃ~!?
 鵜飼菜穂子がJLCのスタッフに準優1号艇であることを教えられて、素っ頓狂な声をあげていた。なんだかかわいらしかったぞ! というのはともかく、そう、鵜飼菜穂子は予選3位で準優白カポック。いつの間に、って、この成績なら当然とも思うのだが、その成績を名人世代にしてきっちり積み上げたのは、やっぱり素晴らしいことだ。
 その後も平山智加とこそこそ話をしたり、人と接するとお茶目で明るい雰囲気を醸し出している鵜飼。一方、たとえばレース前や、レースの準備をしているときの姿は、近寄りがたい空気に包まれていたりもする。背筋がピンと伸び、少しうつむき加減に歩いている鵜飼はきっと、コース獲りも含めた作戦を練り上げているのだろう。10R、レース間のスタート練習は4コースから行っていたのに、本番はしっかりインを獲っている。そうした戦略が鵜飼の脳裏ではうごめいていて、それが鵜飼の表情を戦士のそれに仕立て上げるのだと思う。

Uu5w0289  8Rを逃げ切って予選突破を決めた守屋美穂が、9R後にボートを着水しようとしていた。準優のために試運転でさらに感触を確かめようというのか?
 いや、違う。守屋のボートには「試」のプレートではなく「6」という数字が着いているのだ。守屋は今日、12Rの一般戦にも出走することになっていた。メンバー中、唯一の準優進出。勝負駆けを成功させた後に、得点率とは無関係のレースに出るのはどんな心境なのだろう。
 もちろん守屋は手を緩めるつもりはまったくないようだった。着水したのは、もちろん12Rを万全に戦うため。試運転で感触を確かめるなど、それこそ勝負駆けに臨むかのように、精力的な動きを見せていた。予選突破の感想など聞きたいこともあったのだが、その余裕を見つけることはなかなか難しかった。
 レースでも6コースから2番手争いに持ち込み、3着は取り切っているのだからお見事。3月の多摩川ではどこか思いつめるような表情も見えていたが、今回はさすがにハツラツと見える。若い選手がイキイキと動く姿は、やっぱり爽快だし、魅力的である。

Uu5w0531  つらつらと書いてきたが、勝負駆けは意外とあっさり風味だったように思う。山川美由紀が9Rで早々に予選トップを決め、10Rでは平山智加、鵜飼菜穂子の山川に次ぐ二人がワンツー。予選上位争いはさらりと決まっている。ボーダー争いもそれほど苛烈ではなくなっていて、10Rを終えてボーダーは6・40と高い数値ながら、19位が5・83と大きく離れていた。11Rメンバーでは、19位以下から自力でベスト18に逆転できる選手はおらず、18位以内の選手でもそれほど厳しい条件で走る選手はいなかった。その時点ですでに準優メンバーが決まったかのような錯覚にとらわれたほどだ。
Uu5w0269  逆転の可能性があったのは、金田幸子。1着6・00で、それだけでは次点に食い込むまでだが、宇野弥生か武藤綾子が大敗すれば、潜り込むことができていた。あ、横西奏恵もか。でも1号艇の奏恵ちゃんの大敗はちょっと考えにくかったもんなあ。
 で、金田は結局シンガリに敗れる。エンジン吊りを終え、ヘルメットを脱いだ金田は、「チッ」というふうに唇を歪めた。ドキッとした。金ちゃんのイメージとはまるで違う表情だったからだ。ひょうきんで、ちょっとナーバスでもあって、でも飄々としている金ちゃんに、正直、勝負師の顔は想像できなかった。でも、これで当たり前なんだよな。女子王座に常連として出られる実力は、敗戦を真っ向から悔しがる気持ちが裏打ちしているものなのだ。
Uu5w0542  このレース、熱かったのは4着争い。宇野弥生と武藤綾子はともに4着条件の勝負駆けだったのだ。上位3人の隊形は固まって、あとはどちらが先着するか。結局、宇野が先着し、でも4着じゃ少しも嬉しくないという表情をレース後に見せていたわけだが、一方5着に敗れた武藤の周りには同期の海野ゆかりや、角ひとみ、谷川里江らが集まってきて、声をかけていた。2012_0803_0433 細かい得点率状況を知っていたかどうかはともかく、この大敗が痛いのは当然。海野は渋い顔になっており、何かを告げられた武藤はヘルメットの奥で目を丸くしてもいた。おそらくジワジワと悔恨が滲んできていただろう。
2012_0803_0438  勝負駆けへの感情が強く見られたのは、これくらいだったか。10Rで4着に敗れたことで得点率が6・00を割り込んでしまった岩崎芳美も、表情をやや硬くしていたが、あえて言うならそれを付け加える程度。レース前、岩崎は実に柔らかい笑顔を向けてくれていて、ちょっと身びいきが入っていたから、気になった感じですかね。やっぱり、ややあっさり風味の勝負駆けだったのである。
Uu5w0062  で、予選トップは山川美由紀! 開会式で「田口選手の3連覇を阻止!したいな~」と言っていた山川だが、これで「阻止!したい!」くらい強気なことを言えるのではないかな? 平山智加が10Rで6コースから見事な1着を獲ったあとには、出迎えて声をかけ、さらにニコニコッ! まさか後輩への宣戦布告だったはずはないが、その笑顔は最高の精神状態にあることを示していた。明日快勝したら、「阻止!」と言い切ってよろしいのでは? あ、もちろん田口節子が優出していれば、ですが。(PHOTO/中尾茂幸=廣中、武藤、岩崎  池上一摩=それ以外 TEXT/黒須田)


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