クイーンズ・プライド
11R
①日高逸子 09
②山川美由紀 09
③香川素子 16
④横西奏恵 19
⑤角ひとみ 18
⑥寺田千恵 16
貫禄の差、か。パワー的に不安視されていたグレートマザー日高逸子が、コンマ09の鮮やかなスタートで先手を奪った。2コースの山川美由紀もコンマ09。日高同様エンジン出しに苦しみ、ピストン1個とリング2個を交換しての一戦。「パワーがなければスタート勝負」とばかりにゼロ台まで踏み込み、3コース以下をスリットで圧倒した。これぞ百戦錬磨の勝負勘。
女子王座2Vの日高が颯爽と逃げ、3Vの山川が差して追随する。混戦の3着争いを制したのは、これまた3度も女子王座に輝いた横西奏恵。もっともパワーが劣勢に見えた横西ではあったが、香川素子にあの手この手の技を浴びせて振り切った。日高、山川、奏恵。トータル8Vの貫禄が、他を寄せつけなかった。
サバイバル・トライアル
12R
①田口節子 15
②平山智加 08
③三浦永理 10
④中谷朋子 12
⑤向井美鈴 09
⑥宇野弥生 09
惨事は1マークで起きた。平山智加の差しハンドルが入らず、流れた艇を立て直すために再びハンドルを入れたらキャビテーション。ガクンと失速した艇の真後ろに、5コースからまくり差しを狙った向井美鈴の舳先が追突した。たまらず転覆、失格(負傷帰郷)。間もなく、この衝突の原因となった平山にも妨害失格(-10点)が宣告された。トライアル初日の1マークで、ふたりのレーサーがV戦線から消え去った。
勝ったのは、田口節子。イン圧勝と呼ぶにはほど遠い、薄氷の勝利だった。完全なスタート負け。スリットの段階で、隣の平山に半艇身ほど後手を踏んだ。「起こしからズリ下がってしまう」と本人も頭を抱える非力パワー。そこから伸び返したように見えたのは、ゼロ台の平山がアジャストしたためだ。一瞬、平山は迷ったかもしれない。徐々に絞ってツケマイを打とうか、と。だが、伸び返しを食って攻めたい気持ちを抑え、差しハンドルを入れたように見えた。迷いがあった分、ターンに切れを欠いてあさっての方向に流れ去った。私はそう推測する。平山がもたついている間に、田口がなんとか先マイで抜け出した。
“惨事”は、まだ終わらない。
2着は中谷朋子。微妙な2着だった。優先艇の順序を決する2周ホームのスリットラインで、中谷の内にいた三浦永理の舳先がわずかに掛かっているように見えた。もしもこの舳先がわずか1センチでも届いていたら、2周1マークを2番手で回る権利は三浦に与えられる。逆に、中谷の艇が抜けきっているのなら、中谷が2番手……スリットラインを通過した前後、明らかにふたりは「どっちが優先?」と迷っている仕草を見せた。内外が離れていたため、ふたりには確実な判断はできない。三浦も中谷も減速し、そこから「ままよ!」の気合いで中谷がレバーを握った。
その判断は……誤りだった。三浦の舳先がわずかに食い込んでいたのだ。2着は2着だが、優先艇保護違反でマイナス10点。選手たちには計りようもない、不条理なルールによる犠牲者が、また生まれた。中谷にはまだわずかなチャンス(2連勝で19ポイント)が残されているが、激痛の減点といえるだろう。
「はじめて参戦した賞金王トライアルは、殺し合いのようだった」
服部幸男の言葉だ。今日は、レースそのものが殺し合いのような激闘だったわけではない。が、個々の思い入れの強さがどこかで常識外のエネルギーの衝突(あるいはミス)を引き起こし、それが化学反応のように連鎖する。そんな賞金王トライアルを何度も見てきただけに、「やはり賞金女王トライアルでも……」というのが私の実感だ。サバイバル・トライアル。第1戦を終えて、実質的に9人によるティアラ争奪戦となった。(photos/シギー中尾、text/H)
賞金女王決定戦 得点率一覧
①日高逸子 10・00
②田口節子 10・00
③山川美由紀 9・00
④横西奏恵 7・00
⑤三浦永理 7・00
⑥香川素子 6・00
⑦宇野弥生 6・00
⑧寺田千恵 5・00
⑨角ひとみ 4・00
⑩中谷朋子 -1・00
⑪平山智加 -10・00
⑫永井聖美 ―