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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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選手並み!?モーター整備講習会

 97期生が卒業式を終え、家族と家路に付く準備などをしているころ、我々取材陣はやまと競艇学校からの“特別授業”を受けていた。毎回、SGのピットで「今垣光太郎がやはり整備室にこもりっきりで……」などと伝えつつも、選手が手にしたギアケースやピストンに対して、実際にはどういう整備をしているのかとんと解らないモーター整備。「取材陣もモーターの整備を理解して、選手と話せるようになってもらえれば」という全モ連の狙いから、プロの整備士さんによるモーター整備講座が行われたのである。
 講師は(株)栄和(宮島競艇の運営会社)の1級整備士・上坂勝利さん。97期の整備の授業にも招聘されている方で、つまりは97期のモーター整備の頭脳を我々も共有(?)することになったのである。
 
DSC01391 ←“三ツ割”を始める上坂整備士

 1機のモーターを前に「解らないことや疑問があったらドンドン口を挟んでください」と言いつつ、手際よくエンジンからある部品を取り外した上坂さん。今回の講座のメインと位置付けられていたクランクシャフトの入ったボディである。クランクシャフトはピストンが取り付くモーターの命(現場では“背骨”と呼ばれている)ともいえる部品で、この部分を整備する“三ツ割”は「あまり見る機会がないです。私も学校時代に1度見ただけ」(全モ連広報・大野さん)という貴重なものなのだ。

DSC01394 ←この部品がクランクシャフト。モーターの“背骨”である

 上坂さんはクランクシャフトの周りにあるひとつひとつの部品の取り外し方から、整備後のバランスのいいネジの締め方まで懇切丁寧に辿りつつ、クランクシャフトに取り付けるピストン上端の高さを「57.46ミリから57.48ミリ、多くの選手はそうなるように調整をします。出ているモーターはだいたいこう調整されていますね」と教えてくれる……のだが、日頃から「リング交換か、なるほど」程度の認識しかない我々取材陣の多くは、100分の2ミリまで調整する整備の細かさが解った以外は、そのあまりにも本格的な内容を把握できずに目を白黒。「なにかあったら口を出してくださいよ(笑)」と繰り返す上坂さんだったが、質問や疑問も浮かばないまま“三ツ割”は終了。実は予定時間のほとんどはこの“三ツ割”に費やされるはずだったが、予想外にあっさりと終わってしまったので、モーターを上から順にバラして、全体の整備に対する講座も追加されたのだった。
 ピストンやピストンリング、スリーブ(シリンダーブロック)など、交換が発表される主要部品から、燃料が噴射されるリードバルブ、プロペラを回すギアケースなどの細かい部品まで、ひとつひとつを取り外して、役割や整備、調整の方法が解説される。聞き慣れた部品ばかりなので、“三ツ割”よりは解りやすい(気がしている)ものの、ミリ単位の調整の仕方などの内容はやはり目を白黒……だったが、モーター全体の調整で重要な点は垣間見えた。自然吸気モーターである競艇のモーターで重要なのは「吸気と排気がいかにスムーズにいくか」(上坂さん)。そのため、モーター内部の調整は、空気の通り道の障害を減らしていく作業となるのだ。

DSC01417←青い膜のような部品がガスケット。空気孔が開いているのが見える

 部品の内部にススが付いている、部品同士の接合部のバランスが悪い……など数ミリの変化でも、その部分が抵抗になって空気の流れが悪くなるから洗浄するし、接合し直す。たとえば、スリーブとモーターの本体部分の接合部にガスケットという膜のような部品があるが、そこに開いている空気孔が数ミリでもズレないように(しかも部品の熱膨張を頭に入れた上で)調整する。気の遠くなるような作業だが、今垣が特に前検日に長時間モーター整備しているのは、どうやらこの“吸気と排気”の調整のためであり、ほぼモーターを出してくるのも納得の話である。

DSC01419←チルト角度の調整中。中央のバーを前後させて角度を決める

 この全体の講義中、取材陣がもっとも盛り上がったのはチルト。ご存じの通り、ボートとモーターの取り付け(角度)のことだが、実際にモーターのどこを動かして調整するのかを見たのは初めてだった人も多いようで、みな熱心にのぞき込んでおり、「みなさんはチルトに関しては関心が高いですねえ(笑)」と上坂さんも驚いていた。なおチルト角度はマイナスが出足型、プラスが伸び型と思われているが、各場の水面特徴によって一概に言えないらしい。「宮島ではマイナス0.5度が普通」と上坂さんが言うように、多くの選手が取り付けている角度を基準と考えるのが間違いないようである。

  整備士として、この要領でやれば必ずモーターは出る!と考えつつも、実際には出ないモーターもある。その点のジレンマもあるだろう上坂さんだが「誇りを持ってやっております。モーターで解らないことがあったら、宮島におりますのでぜひ聞いてください」との挨拶で“特別授業”は幕となった。
 今後、取材班が宮島に行った際には、ぜひとも再登場いただきたいものです。ありがとうございました!(松本伸也)

                 DSC01400 今回の講師・上坂勝利さん。宮島競艇場の1級整備士で、97期も指導されている


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精鋭集団に注目せよ!――97期生の真実――

DSC01272  まずは、この数字を見ていただきたい。
88期=244 89期=273 90期=197 91期=268 92期=244 93期=358 94期=287 95期=375 96期=289
 93期と95期が少し多いが、あとはおおむね240~290くらいで推移していることがわかる。これ、何の数字だと思われるだろうか。
 実は、やまと競艇学校における、各期の模擬レースの回数である。新人たちはだいたいこれくらいの模擬レースを走り、競艇という競技での戦い方を学んで、プロとして競艇場に向かうわけだ。
 では、97期生はいったい何回の模擬レースを走ったか。
 554回
 そう、97期は他の期に比べてダントツの数字なのだ。しかもこれ、卒業1カ月前の8月21日現在だから、9月22日の卒業記念レースの日にはさらに増えている。約600回と考えてもらっていいだろう。
DSC01321  60期、69期、82期などを育て上げた小林雅人教官は、「普通、ここまでやるのは無理なんですよ」と言う。訓練は、模擬レースだけではない。整備訓練もあれば、法規などの講義もある。それを1年間という限られた時間内でこなさなければならないのだ。88~96期の模擬レース回数が、標準的だと考えるべきなのである。ところが、11月にデビューする97期生は、通常の2倍、90期と比べれば3倍の模擬レースを走った。彼らは不可能を可能にしたのである。ちなみに、スタート練習の本数も、88期以降初めて2000本を突破している。

DSC01334   97期はやまと競艇学校にとっての勝負期。これは以前の記事にも書いた。選手養成所が本栖からやまとに移って早や5年。88期生が最初の卒業生となるわけだが、それ以降、卒業生のデビュー期(デビューから半年)成績はハッキリと低迷していた。平均勝率が3点を超えたことがなく、最高で91期生の2・93。本栖よりも施設、環境ともに向上したはずのやまと競艇学校から、高いレベルの卒業生が送り出されていない……これは、競艇学校のアイデンティティに関わる問題であるのはもちろん、競艇界全体にとっても由々しき事態である。危機感を抱いた教官をはじめとする関係者たちは、97期で結果を出さなければ、そう考えた。これまでのカリキュラムを見直すと同時に、どうすればハイレベルな新人選手を育成できるかを考え抜いた。まさしく、97期は“勝負駆け”だったのだ。
 その結果が、約600回という驚異的な模擬レースの回数につながった。もちろん他の課業をおろそかにしたわけではない。教官たちの戦略と熱意、そしてそれに応えた97期生の努力と頑張りが、この数字を可能にしたのである。

DSC01302  とはいうものの、最初から順調だったわけではない。97期を勝負期と考えたのは、それまでの低迷を打破しなければと考えたからであって、97期生たちが飛び抜けた才能を示したからではなかった。いや、むしろ入所試験の成績はそれまでの期よりも悪かった、という。「この期で勝負しなきゃいけないのか……」、97期生が入所した昨年の10月には頭を抱えたこともあったとか。課業が始まっても、97期生は決して大いなる可能性を示したわけではなかったそうだ。
 しかし、教官たちは、そして97期生たちも、決して諦めなかった。「この期の訓練は、かなり厳しかったよ」と小林教官が言うとおり、主任である柳田利廣教官を先頭に、実にハードな指導を行なった。小林教官は、現在はすべての教官を統率する、一般企業で言えば管理職の立場だが、勝負のかかったこの期の訓練に、これまで培ってきたノウハウをつぎ込む決意を固めていたという。ところが、柳田教官の熱意は、多くの名選手を育てた小林教官をも驚かせるものだった。訓練方法については何度も何度も議論を重ね、「だったら、柳田に任せようじゃないか」と小林教官は決心、柳田教官を中心にした熱血指導が始まった。
DSC01303  柳田教官は、97期生のキャッチフレーズを「サプライズ」と決めた。入所時には決して優等生とは言えなかった彼らが、プロとしてデビューした後に「サプライズ」を巻き起こす。設定したデビュー期平均勝率目標は3・47。やまと卒業生初の3点超えを目指すばかりか、96期生より1点以上高い勝率をノルマとしたのだ(それ以前に、模擬レースの回数も、すでに「サプライズ」だ)。柳田教官は、「サプライズ」を現実のものとするために、訓練に打ち込んだ。97期生もまた、このキャッチフレーズのもと、必死に訓練についていった。彼らは「サプライズ」を合言葉に、お互いを磨き上げていったのだ。
 97期生は、入所当時、35名だった。卒業したのは、20名。この数字が、訓練の厳しさを物語っている。つまり、11月からプロとして水面に登場する97期生は、その訓練を乗り越えた者たちなのだ。

DSC01337  97期生たちは、ただ厳しい訓練に耐え抜いただけではない。たとえば、ターンマークでの初動の切り方。これまで競艇学校では、少しずつハンドルを送っていくという、安定して旋回する方法を教えていた。97期生は違う。初動でハンドルを勢いよく大きく切る方法を最初から教えられたのだ。納富英昭教官は「いきなり難しい方法から教えたんですよ。だから、最初はみんなよく転覆したよね」と証言する。転覆回数が30回の者などザラにいるそうだ。だが、彼らがそれをマスターした頃には……言うまでもなく、ハンドルのコントロール技術は格段に上手になっていることになる。転覆回数が多いことも、まるで気にならない。あの今村豊が訓練生時代に「ドボン・キング」と呼ばれていたことをご存知の方も多いだろう。97期生は、転覆するごとに技術を向上させていった。高いハードルを課され、失敗を重ねてもめげずにチャレンジすることで、そのハードルをクリアしていった。卒業のときには教官たちに「今期は、はっきりとレベルの高い卒業生です!」と言わしめた、それが97期生なのだ。

DSC01430 卒業記念レースの前日、柳田教官に「レースが終わったら泣くんじゃないですか?」とちょっと悪戯っぽく聞くと、「いや、絶対に泣きませんよ」と微笑んだ。卒業式を終え、競艇学校を出発するバスに97期生が乗り込むと、車内から次々と「柳田きょうか~ん」という声が飛んだ。そのとき、柳田教官はズブ濡れ。卒業式恒例の「教官水神祭=卒業生たちが、これまでのお礼参りの意味も込めて(笑)、教官を水面に投げ込む儀式」で、一緒に担当した小林竜彦教官、唐木雄介教官とともに水面に落とされていたのだ。
 柳田教官は、最高の笑顔を見せていた。たしかに泣いていなかった。バスの中の97期生も、ほとんど泣いていなかった、と思う。「きょうか~ん」という声は、ひたすら明るく、力強いものだったのだ。やることはやった。結果はわからないが、できることはすべてやったのだ。そんな充実感と、その上に結ばれた強い絆が、柳田教官と97期生の間に結ばれていたように思えた。
 精鋭集団・97期生よ、君たちのデビュー期には注目させてもらおう。この熱意が、必ずや3・47のデビュー期平均勝率を達成させると信じる。それを果たして、今度こそ柳田教官を泣かすのだ! 不肖・黒須田、もう、勝手に思い入れさせてもらうもんね。
 あなたたちが「花の97期」と呼ばれる日が来ることを、心から願います。(黒須田守)

※教官写真=左から唐木雄介教官、柳田利廣教官、小林竜彦教官


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「兄弟揃ってSG出場だ!」~97期・双子の山口兄弟を特注!~

DSC01264 今回卒業した97期生の中には、非常に珍しい選手が1人……いや、1組いる。双子の山口修路・隆史(福岡)である。
 
 競艇界の双子選手としては、川島敏昭・和敏、池田浩美・明美に続く3組目となるのだが、山口兄弟はこれまでの2組とは違う、大きなポイントがある。川島兄弟や池田姉妹はいずれも1期違いの卒業だが、山口兄弟は97期の同期。これは艇界史上初のことなのだ。
 それだけに新聞やテレビなどのマスコミからも注目されていたが、注目されていたのは競艇学校内でも同じこと。卒業式では、あまり見たことがない“兄弟2人による卒業生答辞”が行われた他、在校生による贈る言葉では「やっと見分けが付いてきたときにお別れは寂しい」と“ネタ”にされたり、卒業記念のピットでは唐木教官に「隆史……じゃなくて修路か。まったく紛らわしい! 後ろ姿じゃ判らないぞ!!」と、入学から1年経ってなお理不尽な怒りをぶつけられるなど(冗談めかしてましたが)、校内の名物的な存在だったのはおそらく間違いない。今回の卒業生の中でも、まさに特注選手なのだ。
DSC01377 「競輪選手の兄(山口貴嗣選手)が身体を張っている姿を見て」(修路)、「自分の実力を知りたくて」(隆史)。卒業記念レースの前日に行われた記者会見。隣同士に座った山口兄弟が志望動機などを語る中で、やっぱり双子の兄弟として似てしまうことなどを聞いてみた。
「整備の訓練をしていて、雑なところなどが2人して一緒なんですよね(笑)。それとお互いが相手だとつい回りを見失ってしまって。レースでも、僕らがインと2コースだったときに、思わず負けてなるものかと握り合っちゃったら、バ~ンと飛んでいきまして(笑)、2人してゴンロク(5・6着)でした。明日の1レースにも1、2号艇に組まれましたが、明日はまったく意識しないで行きます!」
 その卒業記念1レース“夢の双子対決”は1号艇の弟・隆史が2号艇の兄・修路を寄せ付けずに逃げ切った。山口兄弟のやまとリーグ(模擬レース)勝率は、修路が5.64、隆史が4.34で、優勝戦に出場したメンバーなどと比べるとやや低い。しかし、1点以上差がある兄に、そして同じ1レースに6号艇で出走していた勝率7.11の土屋智則にも勝ったということは、97期全体が得点率ほど差がないと考えることができよう。“デビュー期勝率平均3.47”という高い目標(=優秀)を掲げる期だけに、兄弟揃って口にする目標「2人揃ってSGに参戦!」は、遠い夢ではないかもしれない。

 夢への第一歩、兄・山口修路は11月3日からの福岡、弟・山口隆史は11月29日からの若松でデビューする。
 頑張れ、山口兄弟! SGのピットで待っているぞ!!(松本伸也)

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97期卒業記念のピットから

DSC01306 「さあ行けよぉぉぉっ!」「事故するなよぉぉぉっ!」
 咆哮が飛び交うピット。中学や高校の運動部の試合を思わせるような掛け声が、水面に向かって投げかけられる。その声に弾かれるように、6艇が飛び出していく。卒業記念レース、当たり前のことだが、我々がこれまで取材してきたSGレースとは、おそらくはその他のレースとも、ピットの雰囲気はまるで違っていた。簡単にいえば、これから戦うべき相手は敵ではない。厳しい訓練をともに耐え、プロのレーサーへの道標をともに刻む同志たち。卒業生20名の心には、何よりもお互いへの激励しかなかったのではないだろうか。

DSC01316   言うまでもなく、卒業記念レースといえども、訓練課程のひとコマである。言ってみれば、プロとしての振る舞いを叩き込むための課業だ。レースを終えて引き上げられたボートを片付けている間も、教官の「もっとテキパキと動け!」という叱咤が飛んでいる。ピット内にあるVTR室のモニターに映し出されるレースを訓練生が覗き込んでいると、そこにも教官の叱咤は浴びせられる。名残惜しそうに1マークの攻防だけ見届けて、作業に戻る訓練生たち。実際にプロとしてレースに参加すれば、ボート片付けは必須の作業である。ましてや、デビューしたばかりの新人がそれに参加しないなんてことは、許されるはずがない。教官の怒声は、何よりも彼らがプロとして恥ずかしくない働きをするためのもの。もちろん訓練生たちも、狭いピットを走り回っては、ボート洗浄やモーター格納に汗を流している。最後まで訓練。最後まで教官と訓練生。その姿は清々しいといえた。

DSC01315  とはいえ、これが最後の課業にして、97期やまとチャンプを決めるための戦いでもある。準優勝戦に進出した12名は、渾身の走りを見せるべく、緊張感を漂わせる。
 準優勝戦A、リーグ戦勝率2位の堀本泰二(山口)が飛んだ。前日の共同インタビューでは、「デビュー節で優勝をしたい」と宣言した男だ。さらに、B1斡旋が決まっている池永太(宮崎)も飛んだ。この二人は、納富英昭教官や他の訓練生に有力視されていたようで、ピットはどよめきに包まれた。2コース堀本、3コース池永、4コース盛本真輔(兵庫)がマクリに行ってそれぞれが飛ばし合った展開、そこを突いて差し抜けたのが、5号艇の庄司孝輔(静岡)だ。VTR室でそれを確認した訓練生たちが「庄司や!」と声をあげる。庄司はリーグ戦勝率4・80(堀本が7・15)だから、番狂わせだったのだろう。納富教官は思わず、「マンシュウやな」と笑った。
DSC01342   準優勝戦B、インから逃げたリーグ戦勝率1位(7・72)の田中和也(大阪)、2コースから続いたリーグ戦勝率4位(7・09)の西山貴浩(福岡)が、順当に1マークを回った。ところが、3着争いが見ものだった。いったん、女子で唯一の準優進出を果たした原田佑実(愛知)が3番手に上がったのだ。「おおっ、原田っ!」他の訓練生たちが沸き返った。VTR室のモニターを見ていた者も、水面のほうに飛び出して声援を送る。優出なるか!?(3着まで優出)……しかし、最後はリーグ戦勝率5位と成績上位の山口達也(岡山)が逆転し、1-2-3のカタい決着。山口を応援していなかったわけではないが、ピットに溜め息が満ちた。
DSC01336  それぞれの4~6着、つまり優出を逃した6選手は、以外にもサバサバしていた。堀本も軽く苦笑いを見せただけで、すぐにボート片付けの作業に走った。これがゴールではない。むしろ、この卒業記念はプロへのスタート地点にすぎないのだ。敗れたのは悔しいに違いないけれども、屈辱ではない。この借りは、競艇場で返せばいいのだ。その明確な意識が彼らにあったとは思わないけれども、自然とそんな空気が立ち上っているような気がした。

DSC01352  優勝戦も、そこがゴールのようには見えなかった。優勝した田中和也は、さすがに嬉しそうだったが、かといって狂喜しているようにはとても思えないたたずまいだ。敗れた選手たちも、愕然とした様子など少しもなく、淡々とピットに戻ってきた。その頃には、残りの14名の姿は、すでにピットにはなかった。レース後、すぐに講堂で表彰式が行なわれるため、そちらに向かっていたのだ。ピットから講堂までは、ゆうに5~600mはあるだろうか。優勝戦に出場した6名も、大急ぎでカポックを脱いで、表彰式に向かう。優勝戦後の華やいだ雰囲気は、少しもなかったのだった。
DSC01357  優出選手が少しでも早く講堂に辿り着くように、ピットにはワゴン車が乗り付けられていた。カポックを脱いだ者から、車に飛び乗る。6名全員が乗り込んで、急発進するワゴン車。そのときである。ワゴン車の中からは、大きな歓声がとどろいた。優勝した田中を祝福する声と、無事に優勝戦を戦い抜いたことへの歓喜の声。そのときだけ、レース後のハッピーな時間がやまとの空に発散された。課業である卒業記念レースが、一瞬だけ大レースの装いをまとった。

DSC01329  この卒業記念レースで、97期生たちが掲げた誓いは「完全無事故」だった。スタート事故はもちろん、転覆や落水なども起こさない。全レースで全艇がきっちり完走する。9回戦ったリーグ戦では、ついに達成できなかった目標でもあった。
 一般戦及び準優の全4個レース、6艇がスリットを超えた瞬間、訓練生たちはVTR室のスリット映像に釘付けとなった。フライング艇が出ていないことを確認すると、ピットで作業をしている仲間にそれが告げられ、そして歓声が起こる。「事故するなよぉぉぉ」は、金科玉条だったのだ。そして、優勝戦にいたるまで、フライングも出遅れも、転覆も落水も沈没も、不良航法も待機行動違反も、ゼロを貫いた。彼らがもっとも喜びを爆発したのは、完全無事故が確定した瞬間だった。彼らの“課業”は、最後の最後に完璧に遂行されたのである。
 攻めのレースを、無事故で成し遂げる。彼らにはそんなレーサーになってもらいたい。

DSC01319  おまけ。深川真二が、ピットに顔を出した。卒業記念を観戦に来たようなのだ。そういえば、納富教官は佐賀の大先輩。深川はさっそく納富教官に挨拶、にこやかに談笑してました。訓練生たちはといえば、「深川選手だっ」と小声でささやき合い、興奮した様子。やっぱりプロの、しかもSG級の先輩と間近で接したら、ドキドキしてしまいますよね。私も、こっそりドキドキしてしまったのでした。(黒須田守)


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97期卒業記念チャンプは田中和也!

取材班、ただいま福岡県柳川市の「やまと競艇学校」より戻ってまいりました!

本来でしたら、競艇学校から卒業記念レースの結果を速報する予定だったのですが、なぜか取材班のパソコンからはネットに繋ぐことができず、泣く泣く戻ってきた次第であります(ラリーズクラブさん、コメントありがとうございます。和也と達也でタッチ、にはハマりました^^)。

DSC01356  (左から着順、艇番、氏名、出身 コース、スタートタイミング)
1着 ⑥田中和也 大阪 4 .15
2着 ①山口達也 岡山 1 .22
3着 ②土屋智則 群馬 2 .10
4着 ④西山貴浩 福岡 5 .22
5着 ③盛本真輔 兵庫 3 .08
6着 ⑤庄司孝輔 静岡 6 .16
決まり手 差し

やまとリーグ戦(全9戦)勝率1位の田中和也が、4コースから見事な差しを決めて1着、97期チャンプに輝いた。3着の土屋智則は、現役女子選手・土屋千秋の弟。リーグ戦平均STが.14という、快速スリットが武器の期待株だ。5着の盛本真輔は、訓練の終盤2カ月で一気に伸びたという最成長株。好スタートで果敢に攻めたレースは、なかなかに爽快だった。

SANY0773 この97期は、競艇学校にとって「勝負」の期だという。本栖からやまとに研修所が移ってすでに9期、新人がデビューしているが、この9期はいずれもデビュー期平均勝率が3点を割る成績にとどまってしまっている。この事態を憂慮した競艇学校は、97期生の育成にはとりわけ力を入れた。詳しくは改めて書きたいが、その思いは確実に選手たちに伝わり、「おそらく90期台では、97期がエース期になる!」と、数々の名選手を育て上げた小林雅人教官に言わしめるだけの素材が揃ったという。おそらく何人かは、デビュー節からいきなり舟券になるはず! 残念ながら準優で敗れたが、リーグ戦勝率2位の堀本泰二(山口)は、「デビュー節で優勝したい」とまでぶち上げているのだ。リーグ戦勝率は4点台にとどまってしまった最年少の若狭奈美子でさえ、元名選手の納富英昭教官をツケマイで沈めたりしているというのだから、侮れない(納富さん、苦笑いしてました)。ハッキリ言って、97期生には要注目なのだ! 今から11月のデビュー戦が楽しみで仕方ない!

DSC01300 21日、22日の2日間にわたって、卒業記念レース以外にも、さまざまな取材をしてまいりました(SG同様のピット取材もしましたぞ)。それらのネタを、今週から再来週にかけて、何度かに分けて更新していきます。皆様、どうぞご注目、ご期待くださいますよう、お願いします。(黒須田)


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