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この特集では田中工業「黒須田守」をはじめとした5名のライターから競艇にまつわるさまざまなレポートをお届けします。
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総理杯優勝戦 私的回顧

「宇宙戦艦やまと」発進!!

2010_0322_r12_0760  憲吾が優勝した。と思った。2マークを回って。山口のツケマイをがっちり受け止め、大観衆の待つホームに舳先を向ける。山口との差は2艇身。内から遅れて差した岡崎とは3艇身ほどか。平和島でこうなれば、誰が相手でも抜かれる憲吾ではない。4-2勝負で4-1が1枚もない私は、2着争いに目を向けようとした。
 ところが…………。

12Rコース順 st
②山口 剛 13
①岡崎恭裕 21
③松井 繁 16
④濱野谷憲吾16
⑤今坂勝広 17
⑥萩原秀人 21

2010_0322_r12_0747  ピットアウトでスタンドが沸いた。岡崎のピット離れが鈍く、それを山口がキュッと絞って立場が入れ替わったのだ。やまと卒業生同士がもみ合って、誰もが予想しなかった213/456。もちろん、山口と岡崎にとっても想定外の事態だったはずだ。腹が据わっていたのは、インを強奪した山口のほう。コンマ13のトップスタートだ。一方、2コースに甘んじた岡崎は半艇身遅れの21。動揺があったかもしれない。
 松井に有利だな。
 スリットで私の視線は赤いカポックに行く。本当はアタマ勝負の憲吾を見ていたのだが、スリット同体でカドからさほど伸びず、松井が動かなければニッチモサッチモという態勢だった。松井は動いた。中凹みなのだから、もちろんまくり差しだ。が、ぐんぐん伸び返した岡崎がちょっとターンマークを外す形で、完全に松井の進路を塞いだ。この2艇が流れる。
 山口の逃げが決まったか。いや、松井が握った瞬間に差した憲吾が、内からスルスル伸びている。舳先が半分入った。そこからの伸びは一緒。勝負処の2マークで、山口は若者らしくツケマイを選択した。憲吾もすぐに察知して、外へと追っつける。まだまだ、平和島では役者が違うぞ、という完璧なブロックターンだ。
 よし、憲吾が勝った。
2010_0322_r12_0774   私は確信した。確信して、2着争いを見ようとしたのだ。見ようとして、愕然とした。3艇身後方と思っていた岡崎が、憲吾のすぐ内側にいる!? それは、本当にありえないことなのだ。岡崎の差しは先団2艇よりかなり遅れていた。しかも引き波を2本超えたときに軽くバウンドしているのも視野の隅に入っていた。片や、憲吾と山口は引き波のない水面を全速で旋回しているのだ。2艇の競りでやや流れたとはいえ、岡崎が届くレースではない。むしろ、直線で引き離される展開なのに、なぜそこに……????
 15年ほど競艇を観てきた私の経験則が、その光景を完全否定している。が、実際の岡崎は憲吾を捕えそうな位置にいる。ないない、絶対にないんだってーー!憲吾も驚いたに違いない。昨日の準優で「①(岡崎)の足にビックリした」とコメントしているが、今日はもっとビックリしたはずだ。憲吾は外の山口を捨てて、内の岡崎を絞りにかかった。
 よし憲吾、絞れ、絞りきれば、なんとかなる!!
2010_0322_r12_0784_2  もう、楽勝気分は吹っ飛んでいる。それどころか、絞りきれなかった。岡崎の舳先が憲吾の内に潜り込んでいた。1/4艇身、1/3艇身、半艇身……で2周1マークへ。憲吾は同体になる前に強ツケマイで叩き潰そうとした。その選択も、私の経験則では全然ありの光景だ。が、しかし、憲吾が握ったときには、すでに岡崎の艇が同体を超えて憲吾の進路を完全に遮断していた。これで憲吾の3年ぶりのSG制覇は夢と散った。私の舟券も散った。
 そして優勝したのは、この2艇の競りから艇を引き離し、冷静的確鋭角に差し抜けた山口だった。広島の91期生が抜け出し、福岡の94期生が続く。弱い弱いと言われ続けたやまと卒業生が、SGのワンツーを独占している。その後方では東都のエースと無敵の王者が3着争いを……結果的には山口と岡崎の2艇ががりで、艇界の大スターふたりをギャフンと言わせる展開になったわけだ。
2010_0322_r12_0823  結論。2010年の初SGは、劇的なまでの世代交代を感じさせる幕開けとなった。レースとしても素晴らしい名勝負だった。インを奪い、トップSを切り、先マイし、差した憲吾をツケマイで沈めようとした山口。とことん自力勝負に徹して最後に展開を見事に突いた山口は、SG覇者に相応しい腕と度胸を見せつけた。

 ややミスがあったとはいえ、怪物パワーの力を信じてレースを有機的に演出した岡崎も天晴れだった。1マークで松井を、2周1マークで憲吾を潰した経験も大きな糧になるだろう。銀河系軍団に対抗して「宇宙戦艦やまと」の称号を贈るとしよう。
2010_0322_r12_0829  まあ……それでも私は、憲吾に勝ってほしかったなあ。というか、いまだに優勝したような気がしてならないのだが……「今節の憲吾は優勝が唯一無二のノルマ、2、3着は意味がない」と言い続けた私だが、今日の3着を責めるつもりはさらさらない。あの2周1マークで岡崎を競り潰しそうとしたシーンも迫力満点だったし。今シリーズは憲吾の勝ちたい気持ちが随所に水面を彩っていた。こういうレースをしていれば、いつだってSGを獲れる男なのだ。素晴らしいファイティングレースだったぞ、憲吾!!(Photo/中尾茂幸、Text/H)


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THE ピット――心の戦い

_mg_2410  午後になってから、岡崎恭裕の顔は変わっていたように思う。顔色までが白くなっていたように見えたのは気温のせいだったのかもしれないが、午前中に比べて、表情が硬くなっていたように見えたのは錯覚ではないはずだ。
 9レースが始まる前には、自発的にボートリフト前のモーター架台を動かして、エンジン吊りの準備を始めていた。
 そのこと自体は、新兵として当たり前のことではあるのだが、やけに丁寧に架台を並べ直したりもしていたところを見れば、少し神経質になっているのではないかと思われた。

_mg_1768  岡崎が硬くなりつつつあったことは、同年代の仲間である新田雄史も感じ取っていたのかもしれない。
 スタート展示に行く直前に岡崎がひと休みをしていたときに、新田は付かず離れずといった感じで岡崎の傍にいたのだ。
 あれこれ話しかけて和ませようとするようなことこそなかったが、岡崎のことが気になって仕方がないようにも見えていた。
 新田に対しては、その後、「12レースは見て行きますか?」と訊いてみたのだが、「いや、観ないで帰ります」との返答だった。
 11レースに出走した師匠の井口佳典とともに、帰りの交通手段を決めていたのだろう。……ちなみに書いておけば、井口が萩原秀人に対して「ヒデちゃん、お先するけど、優勝したら連絡するわ」と声を掛けていた場面も見かけていた。
 新田に対しては、「岡崎選手のことは気になりませんか?」とも尋ねてみたのだが、ほんのわずかな沈黙のあとに「逃げてくれると思いますから」と、ゆっくり答えてくれた。
「先ほどずっと傍にいたのが気になったものですから」と続けると、「……逃げてくれると思います」と、新田はもう一度、同じ言葉を繰り返した。

_mg_2759  そんな時間帯において2号艇の山口剛はどうだったかといえば、朝からその表情は硬いままだった。
 装着場で岡崎が山口に話しかけていったときは、2人はそれぞれに笑みを見せていた。だが、彼らの笑顔はどちらとも、無理に浮かべられているようにも見えたのだ。
 それでも私が個人的に、岡崎よりは山口のほうがまだ心配は少ないのではないかと予想していたのは、昨日の準優で山口は、緊張からのミスをすでにしていたからだ。
 まったくの直感に過ぎないことだが、それがある分だけ開き直れる可能性が高いだろうと思われたのだ。
 だが、それを「開き直り」と言うには申し訳ないほど、山口は冷静だった。

_u4w0907  レース後の共同会見で山口はこう言っていた。
「展示から気配はあって、岡崎のピット離れが悪そうだと思っていたので、本気で狙ってみようとピット離れをしたんです」。
 この狙いが見事にはまり、本番で山口は1コースを奪取したのだ。
 そのときピット内では、さまざまな歓声と悲鳴が交差した。レース中も、歓声と悲鳴の交差が続いたが、その熱すぎるレースの詳細については別記事に譲りたい。
 1コースを奪取した山口は、接戦を制して、見事に優勝したのだ!
「(節前から)これが準備なんだというくらい準備をしていた」と言う山口が、貪欲に結果を求めて、それをもぎ取ったわけである。

_u4w0576  取材をしていても、こちらも疲れた1日だった。個人的な話になるが、山口も岡崎も、記念での活躍を始める前にインタビューをしていた選手であり、その戦い模様を見守りながら、大きな結果を出してくれる日を待ち望んでいた選手である。
 その2人が、それぞれに心をすり減らすようにして一日を過ごしていたのだから、それを見ていたこちらも精神的にはきつかった。
 その一方で、時おり……といっては申し訳ないが、時おり松井繁や濱野谷憲吾を見かければ、また複雑な思いにさせられた。その表情がいつもと変わらないことから、「格の違い」を見せつけられるような気もしていたのだ。
 H記者ではないけれど、「終わってみれば……」という結果になることも充分に考えられていたし、東都のエースが結果を出すところを見てみたかったのはもちろんだ。
 今坂勝広や萩原秀人に関していえば、松井や濱野谷ほどいつも通りとまではいえないまでも、岡崎や山口ほど緊張している様子も見られなかった。それぞれにマイペースで1日の作業を続けられていたのだから、伏兵としての存在感は高かった。

_mg_2865  レース後、ピットに帰還してきた山口が満面の笑顔を浮かべているのを見たときは、こちらの疲れも吹き飛んだ。
 山下和彦や海野ゆかりや辻栄蔵がバンザイで迎えると、ボートの上の山口もバンザイ、バンザイ!
 確信こそは持てないものの「獲ったどお~!!」と、よゐこ濱口風の雄叫びをあげたのは、山口ではなく辻だったのではないかと思う。
 隣のリフトでは、岡崎が天を仰いでいたのだが、その岡崎の優勝を願っていたはずの瓜生正義も、「おめでとう」と山口に拍手を送った。
 山口は、それからすぐに岡崎に対して、ごめんと謝る仕草を見せたが、そうされた岡崎も「全然……」と手を振って返した。
 レース後の岡崎は、口惜しさに顔を歪めるわけではなくて、苦笑いを浮かべ続けていた。努力する姿などはあまり人に見せたがらないスタイリッシュな岡崎ならば、そうするほかはなかったのだろう。
 岡崎に対しても声を掛けたい気はしたのだが、今日は山口にだけ、祝福の言葉を掛けておいた。
 内心は悔しくてたまらなかったはずの岡崎にはきっと次があるはずだから。
 そして今日のところはやはり山口だ。
 おめでとう、山口剛!
(PHOTO/山田愼二=1&3&6枚目、池上一摩 =2&4&5枚目 TEXT/内池久貴)


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本日の水神祭! SG初優勝おめでとう!

 山口剛、SG初優勝おめでとう!
 ということで、当然あります、水神祭! 表彰式→記者会見→JLC出演と経て、時刻は午後6時も迫った頃、夕暮れの水面で嬉しい儀式が行なわれています。帰りの飛行機18時30分って言ってたけど、間に合うのかしらん……。

_mg_2945  中心はもちろん広島勢。辻栄蔵が音頭をとって、山下和彦、海野ゆかりが輪の真ん中へ。これに、地元ということで残っていた東京勢も加わって、さあ行こう水神祭。いや、ちょっと待て。あの金髪は濱野谷憲吾。笑ってはいるけど、笑顔に力がないように見えるのは気のせいか。これは切ないシーンだよなあ……。
_mg_2962_2   ともかく、だ。さあ行こう水神祭。辻栄蔵が「空中で一回転しろ」などと無茶ブリをするなか、ウルトラマンスタイルで持ち上げられた山口を1、2の3でドッボーーーーーン! 山口、学生時代は体操選手だったこともあって、辻の言う通りに空中で見事一回転。鮮やかに水面に吸い込まれていったのでありました。
_mg_2973  それにしても、繰り返しますが時刻は午後6時前。水が冷たいぞ~。というわけで、陸に上がった山口は寒い寒いと叫びながら、仲間たちの拍手に包まれておりました。
 本当におめでとう!(PHOTO/山田愼二)


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「優勝します」by憲吾――優出選手インタビュー

_u4w9764  イベントホールは超満員! 5R発売中に行なわれた優勝戦出場選手インタビュー、ベスト6を間近で見られるとあって、4R中からすでに大入り状態でしたぞ。歓声の一番人気はやっぱり濱野谷憲吾! 松井繁に対しては、「さすが王者だ……」というどよめきが巻き起こっておりました。

①岡崎恭裕(福岡)
「今は楽しみというか、ワクワクしています。いい緊張はしていますけど、普段の優勝戦と変わらないですね。伸びはいいですけど、3日目にチルト0度にして他の足も上向いて、全体的に上位級です。(気温が下がったが)急に寒くなったわけではなく、2、3日目も同じような温度だったので、その日と同じようにペラを叩きかえます」

「自分を信じていけば大丈夫と信じています。毅然と戦いたい九州と新鋭を代表して、いいレースを見せます」

※23歳でポールポジションを背負うとは思えないほど、堂々とした態度。1号艇という重圧にも、王者やファンタジスタと戦うプレッシャーにも、まったく負けていないように見えたぞ。

_u4w9797 ②山口剛(広島)
「最初は行き足と伸びがよく、出足が不満だったんですが、ペラを叩いて出足もいい感じになりました。気温は下がったほうがいいです。昨日は暖かくなって合いきっていなかったので」

「優勝を狙ってマクリかもしれないし、差すかもしれないし、どうするかはまだわからないんですけど、スタートを決めないと話にならないので、そこに集中します」

「ここまで応援してくれた方々のおかげでここまで来れたと思っています。恩返しのつもりでいいレースをしたいです。宮島競艇場、ボートピア呉のみなさん、広島に総理大臣杯を持ち帰ります

※最後の決意表明は、ひときわ声を張り上げての力強い宣言。2コースだから差し、と考えがちだが、マクリもあると表明。展開の大きなカギを握る存在になりそうだ。以降のインタビューも、この「マクリか差し」が焦点となっていく。

_u4w9803 ③松井繁(大阪)
「5日間で昨日がいちばんよかったと思います。このメンバーに入っても負けないと思いますよ。エースモーターと言われてるだけに悔しい思いもしてきたけど、負けることはないと思っています」

「山口くんがマクるか差すかといってますが、僕はそこにマクリ差しを入れて、3つで考えます」

優勝したいと思います

※昨日の会見では、「エースモーターというほどのアシではない」と語っていた松井。ところがメンバーを前にすると「負けないと思う」! これは明らかに内の「出ている二人」にプレッシャーをかけたものだろう。展開については、2コースはマクるか差すかしかないので、3コースはもうひとつ増えるのは当然。しかし、それもまたひとつ内の若者に「なんでもするぞ」という威嚇にしか思えないのだが……。最後の「優勝したいと思います」で大きなどよめき!

_u4w9844 ④濱野谷憲吾(東京)
「乗りやすいし、自分なりには納得してます。気温は下がったほうがいい。みんなそう思ってるんじゃないかな。不安はないと思ってます」

「(客席から「ツケマイ!」という声がかかる)ツケマイ……(苦笑)。まだここまでツケマイという言葉が出てきてないので、僕はツケマイ行きたいと思います

「モーターは完璧には仕上がってませんが、気持ちは完璧に仕上がっています優勝しますので応援してください」

※ツケマイ宣言! お客さんの声に押された部分はあったにせよ、実際にそれも想定にあるからこその宣言であろう。もうサシノヤとは言わせない!(byベイ吉)「優勝します」の瞬間にはうおぉぉぉというどよめきの後に大歓声があがっており、もし本当にツケマイが決まったら、平和島のスタンド大爆発必至!

_u4w9856 ⑤今坂勝広(静岡)
「昨日の準優がいちばん緊張していて、それで吹っ切れちゃっていて、今日はリラックスしていますね」

「マクリ、差し、マクリ差しと3つの選択肢があるので、どれかを使いたいですね」

「5号艇だけど展開はあると思ってます。1マークで黄色いカポックが突き抜けますので、応援してください」

※終始、力強い口調でハキハキと答えていた今坂。「ガッツ今坂」という愛称だったなあ、と今更ながらに思い出しました。展開は3つの選択肢。まあ、3コースから外は3つしか選択肢がないんですけどね(笑)。ただ、昨日の準優では、実際に5コースから握って攻めているぞ。濱野谷がもし差しハンドルを入れたら、この男が飛んでくる! 黄色いカポックの突き抜け、本当にあるかも!

_u4w9882 ⑥萩原秀人(福井)
「(たくさんのお客さんを前に)緊張してます。いつも緊張しているので、いつも通りでいいです。(回り足が評判だが)いいと思います。(ターン回りがいいということ?)はい」

「マクる足はないので、差しかマクリ差し。マクリ差すところもたくさんあるんでね

「6号艇だし、この相手だし、大きなことは言えませんが、虎視眈々と優勝を狙います」

※実に言葉少なのインタビュー。「6コースはマクリ差すところがたくさんある」というのは、言い得て妙、でありますね。何しろ回り足バツグンだし……。

 6名が6名とも力強く前向きな言葉を連ねたインタビュー。平和島のボルテージが一気に上がった瞬間でした。さあ、優勝戦。誰が有言実行となるのか……。(PHOTO/池上一摩)


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THE ピット――「優勝戦の朝」の顔

_mg_2027  岡崎恭裕は涼しげな顔をしていた。
 新鋭王座の際にも前検日からリラックスしきっているような表情を見せていたが、今朝の岡崎もそれと変わらない顔つきで、実にのんびりと過ごしていたのだ。
「リラックスできているようですね。緊張はないですか?」と訊いてみると、「全然。今のところまったく大丈夫です」と、さわやかな笑顔で答えてくれた。
「気温が下がっても大丈夫そうですか?」とも確認してみたが、「はい。逆にそっちのほうがいいんじゃないかとも思います」とのことだった。
 その後の岡崎は、小・中・高校の先輩にあたる中尾カメラマンと話をしていたが、その様子は驚くほどの自然体! SG初優出で1号艇に乗る23歳のものとは、とても思えないほどだった。

_mg_2059  岡崎がいた場所は、屋外ペラ作業場近くの水面際だったが、10時過ぎくらいになって、松井繁が通勤着(ジャージ)で出てきて、ペラ調整を始めた。
 それまで作業をしていた井口佳典が松井に何か一言掛けて立ち去ろうとしたが、ハハハッと笑った松井は、その井口の背中に向かって声を掛けた。
「おい、井口。井口の“口”は、口だけの口やって最近言われとるらしいで。スタートも行かへんって」と続けて、周りを笑わせた。
 一瞬、松井がカマギーに見えたものだが、そんな松井がいつもと“別人”だったのかといえば、そうではない。
 屋外ペラ作業場での調整時間は短かったが、その後すぐ隣のペラ小屋に移って服部幸男と何かを話したあと、整備室とペラ小屋を往復するなど、徐々に行動的になっていったのだ。1レース後には、レーシングウェアに着替えてエンジン吊りの手伝いにも出ており、ムダのない時間の過ごし方は、いつもと変わらない王者のそれだった。

_mg_2074  動き出しが早かったといえば今坂勝広もそうだ。
 こちらがピットに入った10時前にはペラ小屋のちょうど真ん中あたりに陣取り、集中して作業をしている姿が見られた。
 その後、1レースのスタート展示が始まった頃に装着場のボートにプロペラを取りつけると、展示が終わった直後には、そのまま試運転に出て行った。
 きびきびと作業をしている様子はいかにも職人といった感じで、危険なダークホース的な匂いを漂わせていたものだ。

_mg_2051  10時頃、ピット奥の整備室にいたのは濱野谷憲吾ひとりだった。モーター本体を割って、調整しており、その作業は、1レースが始まる頃まで続けられていた。
 ただ、途中でその様子を再確認してみようとしたときには、ピストンをこすっているところが見かけられたので(おそらく、ピストンに付着したカーボンの汚れを取っていたものと思われる)、大がかりな調整をしていたわけではないだろう。そうして細かいところにまで目を配り、やり残しがないようにしていたのではないかと考えられる。
 整備室から出てきた濱野谷が、ゆっくりとピット内を歩いていたときは、集中した、いい表情になっていた。

_mg_2151  ピットに入ってなかなか姿が確認できなかったのが萩原秀人だった。
 そのため、私より早くピットに入っていた中尾カメラマンに、その姿を見かけたかどうかを訊いてみると、「早い時間に、装着場でボートとモーターの点検をしていたよ」とのことだった。
 1レース後には、今垣光太郎のエンジン吊りを手伝うために出てきていたが、その際に吉田俊彦と話している様子は、いかにも彼らしい独特のマイペース……。言葉で表現するのは難しいが、「普通に笑ったりするポーカーフェイス」といった感じで(矛盾した表現のようだが、感情のありかが掴みにくい飄々とした感じを持っている)、その様子はいつも通りだ。
 エンジン吊りの作業がひと段落ついたあとには、ヘルメットをかぶったままの今垣に何かを話しかけられて水面を見つめ、「そうですね」などと答えていたので、何かしらのアドバイスを受けていたのかもしれない。大舞台の経験はまだ少ない萩原だが、偉大な先輩が傍にいてくれ、力強いことだろう。

_mg_2124  優勝戦メンバーの中で、表情が少し気になったのは山口剛だ。
 最初にその姿を見たのはペラ小屋でのこと。同県の山下和彦と辻栄蔵に囲まれて作業をしていながら、隣りにいた横西奏恵の言葉にニッコリ! その笑顔は岡崎に負けないほどさわやかだった。
 いつも通りの彼だな……と嬉しくなったが、その後に山口を見かけるたびに表情が硬いような印象を受けたのだ。
 ただ、これが、結果とどう結び付くかはわからない。リラックスしていた岡崎にしても「今のところまったく大丈夫です」と言っていたように、どこかで突然、緊張で体が硬くなるかもしれないわけだ。逆に、緊張しているように見えた山口がどこかで吹っ切れる瞬間を迎えるかもしれないし、それは本人にもわからない部分……。そしてまた、そうした緊張やリラックスが結果にどう結び付くかも紙一重のことになる。

 ピットではいつも、選手たちの表情が気になるが、今朝は、いつも以上にそんな部分が気になった。
(PHOTO/山田愼二 TEXT/内池久貴)


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